2.道のりは辛く

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ほとんど昼抜きだった俺は肉とパスタ、ピザ、サラダメガ盛りにドリンクバーを付けた。 彼女はスープカレーにドリンクバー。 お互い飲み物を持ってきてから改めて 「お疲れ様でした」 さすがに俺の注文量に毒気を抜かれたか、彼女は笑顔だ。 「最終日は店長達も一緒にご飯行きます?」 彼女は笑いながら、ご免なさいと手を振る。 明日明後日は夜まで仕事。今日だけ一日休み。 「カナさん本業は?」 サラダを彼女に取り分け、軽く聞く。 目を泳がせる事数十秒、小さな声で 「アロマセラピストです」 俯きがちにボソボソ。 ボディケアやエステをやっているらしい。 「マネキンはどうして?」 「……趣味と実益」 「えっと?」 「……自分のお店持ちたいから資金作りです。セールストークも磨けるし」 顔を上げて俺をみる。 黒い瞳に吸い込まれそう。 凄いな。 夢を現実にするべく頑張ってるんだ。 スパゲッティが来た。ちょっと遅れて肉が来た。彼女のスープカレーがくるとテーブルがパンパンになった。 先に飯だな。 腹も落ち着き、テーブルもドリンクのみになる。 「カナさん」 「その呼び方」 苦笑する彼女が掌を俺に向け、待て、をする。 「会った直後で名前呼びって」 ああ不機嫌だったのはそのせいか。 「すみません、俺すぐやっちゃうんですよね」 「もういいです、でも私かなり年上なんですけど」 「?」 カナさんが上目使いで俺をみる。 「店長があなたの事色々話してくれて。」 ポッと赤くなったと思うのは気のせい? 脈あり? 「失礼ですがいくつ上?」 「……五つ」 俺は今年26。彼女は31。 彼女を見つめる。 口許に冷めた微笑み。 興味無くしたでしょ、と思ってる? 「今の振りだと十以上、上かと思いました」 真面目腐って答える。 「呼び方、カナさんでいきます」 一瞬固まった彼女が盛大に吹き出す。 本当表情豊かな人だ。 その後はたわいもない事を話した。 話している内に、彼女の言葉のアクセント、少し違和感。 だけど何か聞き覚えがある。 最近もどこかで……
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