1.出会いは甘く?

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「すみません!失礼致しました」 もう最敬礼。 まずい、まずい、まずいって! 心臓がバカ鳴り。 ヤバイ、聞かれそう! 暫くの沈黙の後、ふうっと息を吐く音。 「いいですよ、慣れてますから」 思わず顔を上げる。 俺は178センチ、彼女を見下ろす形になる。 彼女は俺を思い切り見上げている。 首のラインが伸びて、思わず触りたくなる。 「ホントに申し訳ありません。今日から三日間宜しくお願いします!」 「こちらこそお願いします」 おぉ、大人対応。 「あ、あの名前を。私は遠州屋の営業で山口直人と申します。」 わたわたと名刺を渡す。 彼女は慣れているのか、綺麗な動作で名刺を受け取った。 彼女の手から、微かに花の臭いがする。 「齊藤花菜と申します。今日はマネキンなので名刺はありません。」 普段は名刺を持つ仕事か。 もっと知りたい、サイトウカナさんの事。 「打合せ終わったかい?もうすぐ開店だよ」 店長が自動ドアの鍵を開けに小走りに脇をすり抜けていく。 おぅあ! まだ他の店舗も回らんとあかんのに。 「カナさん」 彼女が目を剥く。 「終了時間にまた来ます。じゃ」 急いで搬入口に向かう。 あ、忘れた。 店長に挨拶だけしとかないと、と思っていると運良く彼が戻ってきた。 というか俺めがけて駆けてきてる? 「惚れたな」 息を切らせつつ、にんまりする店長。 嘘をつく必要は全く感じない。 「一目惚れってあるんですねえ」 へへっと笑う。 「頑張れイケメン、良い子だぞ」 肩をバシンとやられ、気合いの入った俺は次の店舗に向かった。
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