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ぱんぱぱぱーん、ぱんぱんぱん、ぱんぱかぱーん。
いつもより長いフレーズのファンファーレの後、黄昏の空が割れた。その割れ目から、真っ白い、のっぺらぼうのような巨人がゆっくりと舞い降りてくる。
ぎゅっ、とお兄ちゃんから貰ったバットを握り絞めて、私は歩き始める。
巨人は大地に足を付け、背中からうねうねと触手のような光の筋を伸ばした。やがてその筋は目にも止まらない速さで伸びてレーザーみたいになって、街を破壊していく。
道路の脇で祈り震える人たちを横目に、私は巨人へと歩いていく。空には自衛隊のヘリコプターが凄い音を立てている。遠くから「どおん」という大砲の音が聞こえる。
何がどうあっても、死ぬわけにはいかなかった。死ぬにしても、ぎりぎりまでそれを受け入れることは出来ないと思った。
巨人から放たれたレーザーが、遠くの空を飛ぶヘリコプターを撃ち落とした。それでも他のヘリコプターは決してひるまず、巨人へと向かって行く。
神様。私、あなたに刃向かいます。終末なんて嫌なんです。
巨人の膝のあたりで、小さな爆発が起こった。戦車の大砲が当たったのかもしれない。それでも巨人はびくともしない。淡々とレーザーを放ち、街を破壊していく。
怖くて立ち止まりたいけど、立ち止まっちゃいけない。私を好きだと言ってくれた、あの人のために、死ぬわけにはいかない。殺させるわけにもいかない。
でももし、私達が神様、あなたを殺せなかったとしても、と私はお祈りをする。
あの子だけは天国に送ってあげてください。
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