君の瞳

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「ほら、これ」 「あっ!ミャー太郎だ!」 俺と彼女の声が重なる。 買ってきたのに気づかれていないアイス に隠すように、小さく舌打ちをした。 彼女はというと、『ミャー太郎』と名付けた白猫を撫でている。 「ね、ねっ」 「なに」 俺が自分のアイスから口を離して彼女を見ると、彼女はミャー太郎を顔の前で抱えて顔を隠していた。 「ミャー太郎が…それ欲しいって」 彼女はミャー太郎の足を持って、俺が持っているもう1つのアイスを指さす。 被っているお面を付ければいいのに。 なんて言ってみても、彼女は絶対にお面を付けない。 いつも身につけているというのに、顔には付けない。 「……んだよ。ほら、こっち来い」 「うん?」 俺のイラついた声に気づいていない彼女は、頭にハテナマークを浮かべながらも素直に俺の隣に座った。 そして、白猫を優しく下ろす。 彼女のことが好きらしい白猫は、足元の日陰で小さく丸まった。 「もう溶けてきてる」 「えっ!?うわっ、ほんとだ!」 目を軽く見開いてアイスを受け取り、慌ててアイスに口をつける。 そんな彼女のお面の裏には、小さくて幼い文字が書いてある。 見えないけれど、見たことがある。 見せてもらったそれは、俺にとっては胸を締め付けるものだった。 『ユウキ』 その人が女か男かすら、俺は知らない。 知る権利があるのかすらわからない。 「アイスありがとう。今度は私がアイスあげるね」 でも、そんなの知らなくてもいい。 俺は"今"の彼女が知りたいから。 【完】
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