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「49番、五十嵐侑弥、14歳です。特技は声マネをすることです」
「では、何かのマネをやってください」
「…黒柳徹子さんです」
どういうレパートリーだよ!と思わず突っ込みを入れそうになる。こらえたが、周りもおそらく同じ気持ちなのだろう、審査員の中に吹き出す人がいる。
審査員はいいなぁ、遠慮しなくていいからなぁ、なんて思っていたら、いつの間にか彼の番は終わっていた。
「次の方どうぞ」
その声で、僕ははっと我に返って立ち上がった。
「50番、平塚玲央です。13才です。特技は…」
そこで僕はしまったと思った。でもしょうがない。
「…歌と、モノマネです」
思った通り、その場にまたかという空気が広がる。審査員の中から女性が立ち上がった。
「これはアイドルのオーディションですよ!!そんなにモノマネやら芸人まがいのことがしたいのなら、吉本にでも行きなさい!」
うわきっつ、この人。見かけによらず、性格がきついっぽいし、権力もってそう。となりの男性にたしなめられている。ーーしかも、敬語で。
「歌を、お願いできますか?」
彼女をたしなめていた男性が、その場を取り繕うように言った。
「SEOSの、シャインシャインでお願いします」
僕はすかさず、元国民的アイドルグループの大ヒット曲を選んだ。憧れのグループで、3年前に解散しているのだが、この事務所のグループの曲にしておけばウケが狙えるというとっさの計算含みだ。
「どうぞ」
「そうさーシャインシャイン100%ーもう頑張るしかないさー僕たちにあふれる輝き永遠に忘れないでねー」
「はい、ありがとうございます。次の方どうぞ」
「これにてオーディションは終了となります。お気をつけてお帰りください」
解散を告げるアナウンスが流れ、出口に向かっていく人の流れができる。僕は人ごみが嫌いだから、 しばらくその場に立っていた。すると、さっき黒柳徹子のマネをしていた人が話しかけてきた。
「あのー、番号札つけっぱなんですけど」
「へっ?」
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