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「戻さないと、受からないかもしれないよ」
「あ、はい戻してきますっ!」
ったく、俺、何しちゃってるんだろ。近くにいた男性に状況を説明して番号札を渡す。運よく彼が渡してくれるというので、それを彼に任せてそのまま出口に向かった。
「大丈夫だった?」
なぜか彼は俺を待っていたらしい。名前?・・五十嵐・・・侑弥、だったか。彼はさっそく話しかけてきた。
「49番の五十嵐侑弥。俺、平塚くんのモノマネが聞きたいと思って」
「はぁ」
展開が早すぎてついていけない。昔からいつもこうだ。フリーズしたのを放置されてそのまま置いていかれる。気付いた時にはもう遅い。
「50番の平塚玲央くんだよね?まさか平塚くんもモノマネでくると思ってなかったから、印象残したくて黒柳徹子にしちゃってさ。結局あの人がキレるしさ、ほんと申し訳なかったね。平塚くんは何のモノマネでくるの?」
「いや、、、歌丸師匠とかしかできなくて」
なぜか彼とはうまく話せている自分がいる。なんでだろう、馬が合うとかいうのかな?
「どっちもしっぶっ!」
ツッコミも冴えてる、こんな人になりたかったなぁ。顔からしても受かる人なんじゃないかなぁ。。。
「歌丸聞かせてよ」
「えっ?」
「まあまあ、いいからいいから」
うまく乗せられて、気付いたらやる気になっていた。
「桂歌丸でございます。どうぞよしなに」
「ぎゃははは!うまいじゃん!」
「そうかな…ありがとう」
「じゃあさ、こんなとこで会えるのも今日だけだからさ、友達になってくれない?じゃあさ、っていうのもなんだけど」
「ああ、うん、…はい」
最後が敬語になったのは、そういえば一つ上だったのかもと思ったからだ。でも、彼は気にしない様子で言った。
「友達なのに敬語ってヘンだし、柄じゃないからいいよ。大体、すでにタメだし」
「あっ、そうだった」
はい、のひとことで、そこまで気遣ってくれる友達というのが新鮮だった。
二人は簡単な自己紹介をした後、メルアドを交換して別れた。
―――2週間後。
玲央に封筒が届いた。もちろん中身は合格を知らせるもので…、、、
「侑弥くんはどうだったのかな…」
もし、一緒に受かっていたら…でも、、
もし、落ちていたら…
そう思うと、メールができなかった。
僕だけ喜んでもいいのかな…
そのとき、
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