1  結成前夜

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「戻さないと、受からないかもしれないよ」 「あ、はい戻してきますっ!」 ったく、俺、何しちゃってるんだろ。近くにいた男性に状況を説明して番号札を渡す。運よく彼が渡してくれるというので、それを彼に任せてそのまま出口に向かった。 「大丈夫だった?」   なぜか彼は俺を待っていたらしい。名前?・・五十嵐・・・侑弥、だったか。彼はさっそく話しかけてきた。 「49番の五十嵐侑弥。俺、平塚くんのモノマネが聞きたいと思って」 「はぁ」  展開が早すぎてついていけない。昔からいつもこうだ。フリーズしたのを放置されてそのまま置いていかれる。気付いた時にはもう遅い。 「50番の平塚玲央くんだよね?まさか平塚くんもモノマネでくると思ってなかったから、印象残したくて黒柳徹子にしちゃってさ。結局あの人がキレるしさ、ほんと申し訳なかったね。平塚くんは何のモノマネでくるの?」 「いや、、、歌丸師匠とかしかできなくて」  なぜか彼とはうまく話せている自分がいる。なんでだろう、馬が合うとかいうのかな? 「どっちもしっぶっ!」  ツッコミも冴えてる、こんな人になりたかったなぁ。顔からしても受かる人なんじゃないかなぁ。。。 「歌丸聞かせてよ」 「えっ?」 「まあまあ、いいからいいから」  うまく乗せられて、気付いたらやる気になっていた。 「桂歌丸でございます。どうぞよしなに」 「ぎゃははは!うまいじゃん!」 「そうかな…ありがとう」 「じゃあさ、こんなとこで会えるのも今日だけだからさ、友達になってくれない?じゃあさ、っていうのもなんだけど」 「ああ、うん、…はい」  最後が敬語になったのは、そういえば一つ上だったのかもと思ったからだ。でも、彼は気にしない様子で言った。 「友達なのに敬語ってヘンだし、柄じゃないからいいよ。大体、すでにタメだし」 「あっ、そうだった」 はい、のひとことで、そこまで気遣ってくれる友達というのが新鮮だった。 二人は簡単な自己紹介をした後、メルアドを交換して別れた。   ―――2週間後。 玲央に封筒が届いた。もちろん中身は合格を知らせるもので…、、、 「侑弥くんはどうだったのかな…」 もし、一緒に受かっていたら…でも、、 もし、落ちていたら… そう思うと、メールができなかった。 僕だけ喜んでもいいのかな… そのとき、
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