Song 11

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校門の外側にある「卒業式」という立て看板になにげなく目をやった途端、その向こう側に人がいた人と、ふいに目が合った。 相手は俺を見て、驚いた表情をつくった。 俺のほうは、その時どんな顔をしていただろう。 目は合ったが、相手は幻だと思った。 さっき音楽室で一緒に卒業できたらよかったな、とか思っていたから、そのせいにも思えた。 だけど相手の唇が動き、それが幻ではないことを知る。 「……あやせ、くん」 しゃがれた声が耳に入ったと同時に、今度こそ息をするのを忘れた。 俺の知っている声とは違う。 だけど、それはまぎれもなく目の前にいる人―――音々が発した声で―――。 「そつぎょうおめでとう」 そう言って笑顔を見せた瞬間、まるで呼吸でもするように、自然と涙が溢れた。 力が抜けて、体を支え切れなくなり、ゆっくりその場にしゃがみこむ。 音々。音々。 「な、んで」 涙が溢れて、言葉にならない。 気配が近付いたかと思うと、膝を折った音々が、俺の背中に手を置いた。 「しんぱい、かけたよね。だまって、いなくなって、ごめんね」 顔を覆った手の隙間から見ると、音々が困ったような顔で笑っていた。 その笑顔と今の言葉が胸に詰まって、また熱いものがこみあげてくる。 心配したよ。 ものすごく怖かったよ。 だけど、もうそんなことはいい。 「音々が、生きてくれていて、よかった……」 生きていてくれて、自分の足でちゃんと立って、笑ってくれている。 それ以上なにを望むことがあるというのだろう。
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