- 第1章 ―

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 それ故に、余計にそう思うのかも知れない。だからつい、弾みで聞いてしまったのだ。 翡翠 「………あの、………疲れませんか?」  と、気付いたときには声に出してしまっていた。その声に帝は『ピタリ』と足を止め、振り返ると訝しむような瞳で、翡翠を見詰めてきた。 帝 「は?……とは、一体、何のことでしょうか?」 翡翠 「無意識って言うか、気付いてないんならいいです。自覚しなければ意味ないんで。俺からは言えません。」  帝の為を思うならハッキリ言ってやった方がいいのだろうが、初対面の人間に対してそう指摘するのは、いくら何でも失礼だ。  暫く、帝は窺うような視線を翡翠に向けていたけれど。先程翡翠が言ったように、それ以上言うつもりがないと悟ったのか、また歩き出した。 翡翠 (あちゃ~。今のは、いくら何でもマズかったかな?でも、思った瞬間、声に出ちゃってたんだよね。)  こう言う突拍子もない言動は、恐らく母譲りなのだと思う。〝父と離れ難いから〟と言って、勝手に翡翠の転入手続きを進め、マンションを引き払うと言ったとんでもない母・マリエル。
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