- 第3章 -

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 そう言って、困ったように笑った夏樹。それが嫌味に聞こえないのは、滲み出る夏樹の人柄のお陰なのだろう。 -暫くすると、職員室と書かれたプレートが見えた。話している間に辿り着いたらしい。 夏樹 「はい、ここが職員室。じゃあ俺、教室に戻るから。また後でね。」  手を振って、夏樹は廊下を去って行った。そこで漸く、翡翠は名乗るのを忘れていたことを思い出した。 翡翠 (………同じクラスって言ってたっけ。 お礼も、その時でいいかな?)  転入生なので、どうせ軽く自己紹介せねばならないだろうから、と結論付けた翡翠だった。 -御影学院 校舎内 職員室- 翡翠 「失礼します、おはようございます。転入生の『玖堂 翡翠』ですが。 1ーSの担任の先生は、いらっしゃいますか?」 ?? 「おー、遅かったな。お前が転入生か。 なんつーか………平凡だな。」  そんなことを言いながら近付いてきた男。いや、職員室にいる以上は教員なのだろうが、とてもそうは見えなかったのだ。  思っていたより若く、見た感じは二十代半ばくらい。顔もイケメンと言っても差し障りない、とは思う。
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