- 第3章 -

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 そもそも。安斎分家である水晶に対し、翡翠は安斎本家の嫡流だ。本来、安斎本家の現当主は、瑪瑙であるはずだった。  しかし、瑪瑙は『自分は当主に相応しい器ではない』と、あっさり当主の座を放棄。その為、先代が当主代理を務めている。先代は、翡翠が高校卒業と同時に『当主の座』を翡翠に譲るつもりでいるのだと言う。  翡翠は権力や財力に興味はないので『安斎本家当主』を継ぐかどうか、まだ迷っていた。そろそろ決めねばならないことは、わかっているのだけれども……………。  ただ、母の実家であるフランスの『元超名門大貴族の当主(爵位)』を継ぐ、と言う選択肢も存在する。  と言うのも。グランメールには母・マリエル以外の子がなく、孫息子である翡翠を大変可愛がっており、翡翠に継がせたいと言っているらしい。  まぁ、その場合。『安斎本家』と違い、向こうの親類縁者が黙っていないだろうが………。 夏樹 「………翡翠?どうかしたの?」  黙り込んだまま、難しい顔をしている(と言っても長い前髪のせいでわかりづらい)翡翠に、心配げに夏樹が覗き込むようにして、問い掛けた。
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