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───ピピピピッ、ピピピピッ、ピピ─── 「んっ……もう朝か…」 カーテンの隙間から溢れる光に目を細めながら目を覚ましたのは篠原恭二。桜田門学園という男子校に勤めている数学教師である。起き上がろうとするも体に何かが掴まっているようで起きられないでいる。 「またお前か…こら、起きなさい。礼二」 恭二の体に掴まっていたのは篠原礼二。恭二の弟であり桜田門学園に通っている2年生だ。ほぼ毎日寝ている間に恭二の布団の中に潜り込み抱きついて寝ているらしい。 「んぅ…にいさ…ん…」 寝ぼけているのか微笑みながら抱きついたまま恭二の胸元にすり寄って顔を埋めている。全然起きる気配がないであろう礼二に困った顔をした恭二はとある手段にでた。 「ほら、起きないといつものができないだろう?自分で起きないとしてあげられないな」 礼二の耳元でそう呟けばパチッと目を覚まし起き上がれば両手を広げてきた。それを見れば恭二はクスクス笑いながらも起き上がり礼二を抱きしめてやる。向き合ったまま片方の頬をお互いにくっつければおでこに軽くキスをしてやる。 「へへっ、兄さんおはよう!」 さっきとは違いとても嬉しそうに笑いながら挨拶をする礼二。ニコニコしながら恭二を見つめる。 「お前、よくこれ飽きないな。もうやり始めて何年になるんだよ」 苦笑しながら礼二を見つめるが相手は全然飽きていない様子。むしろもっとしてほしそうに見える。この行為の発端は両親だ。自分たちの両親が大手企業の責任者、所謂社長と副社長で礼二が中学にあがる頃、海外に会社を立ち上げることになり、家を出ることになったのである。大学生だった恭二は教師になる夢のため日本に残り、礼二は恭二と離れたくないと一緒に残ったのだ。 そのため寂しがっていた礼二にしていた行為がまだ続いていたのである。
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