旅立ち

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ようやく涙が止まった俺は 君とよく出掛けた道を1人で歩いた。 1人で歩く道は、いつも以上に 道のりが長く感じた。 そんな道を歩き続け、俺は海に着いた。 いつも君と腰掛けていた場所に1人で腰掛ける。 何年も前から君とこの場所で 夕陽が沈むのを見ていた事を思い出す。 そんな俺の隣にいたはずの君はもう居ない。 …分かっていた…そんな事… …こんな事をしても…君には会えないのに… …僕は君の温もりを探してしまう… 君の最期を見届けられなかった俺は 君になんて謝罪すればいいのだろう。 …もう夢でしか会えない事は分かっているのに… …そんな事ばかり考えてしまう… 「いつまでも暗い顔してないで、前を向いて歩きなさい!」 突然、俺の背中を押すように突風が吹いた。 突風は、まるで君が俺の背中を押す為に 吹かせたかのように感じた。 そんな事は無いと分かっていても 何故かそう思わざるを得なかったのだ。 「…そっか………お前が言うなら、俺も歩かなきゃダメだよな…美々…」 君と過ごした時間は とても楽しくて幸せだった。 君が旅立った時は とても悲しく胸が張り裂けそうだった。 君と過ごした時間は 全てが印象深く覚えている。 俺が君に対して出来る事は 君という存在を忘れないという事だけだ。 君と過ごした12年という月日を 忘れない事。それが俺の出来る事だ。 いつまでも俺を見守っていてください。 そしていつか、また笑顔で俺を迎えてください。 …その時は…また一緒に…あの海へ行こう… …それまでの間…しばらくお別れだな… …じゃあ、またね。美々… 第1話 完
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