旅立ち

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高校生になった俺は 少し離れた高校を選んだ。 家にいる時間よりも 学校に行っている時間のが 自然と長くなってしまった。 朝早くに家を出て夜遅くに家に帰ってくる。 今までは毎日のように海へ出掛けていたが それも休みの日以外は出来なくなった。 そんな時でも君は不満な顔1つせずに 朝どんなに早くても 俺に声を掛けて送り出してくれた。 夜どんなに遅くても 俺に声を掛けて帰りを待っていてくれた。 俺が休みの日に用事がある時は 家を出る時に不満そうな顔をしていたね。 俺と海に出掛けるのが楽しみな君は 少し残念そうにしてるけど 俺が家に帰った時は嬉しそうに迎えてくれた。 今思うと俺は、君に寂しい思いを させてしまっていたんだね。 高校を卒業した俺は 社会人として家を出た。 その時の君は寂しそうな顔で 無理やり笑顔を作って笑っていたね。 その時の顔を今でも俺は覚えている。 それでも、君の頭を撫でると 君は嬉しそうに笑ってくれた。 家を出るのは寂しかった。 しかしながら、家に帰れば君がいる。 家族達がいる。その存在が心を支えになっていた。 …そんな日常が…いつまでも続くと… …勝手に思ってしまっていた… しばらく仕事で家に帰れない日が続いた。 数ヶ月に1回というペースになっていた。 どんなに遅く帰っても 君は身体を起こして俺を迎えてくれた。 そんな君の身体は しばらく見ない間に小さくなったと感じた。 そんな君と久々に海に出掛ける。 君の横顔は昔見た顔よりも 疲れているように感じた。 しばらく帰れない日が続いていた。 仕事中の10月の9日。 突然父親からメールが来た。 内容は、今でも忘れられない。 君の体調が悪く、寝たきりの状態だ。 その言葉が俺の思考を停止させる。 君がそんな状態になっていた事を俺は何も知らなかった。 君が苦しんでいた事を俺は何も知らなかった。 俺は無力だ。 君に何もしてやれない。 君は俺の帰りを待っていたのだろうか。もしそうであればそう考えただけで胸が痛む。 俺が家に帰ったところで 君の状態が良くなる可能性は 限りなくゼロだと思うのに それでも俺は君の事を考えてしまう。 仕事の途中に再びメールが届く。 それは妹からのものだった。 メールの内容は 君が元気になったという報告だった。 写真が添付されており、 そこには笑顔の母親と妹と君が写っていた。 そのメールを見て俺は安心した。
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