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仕事が忙しく帰れない日が続き、
君が旅立ってしばらくして、俺は家に帰った。
君がいたはずの場所には花が飾ってあり、
その場所は君がいないだけでとても広く感じた。
部屋に入ると、君が笑顔で
写っている写真が写真立ての中に入っていた。
そんな写真の近くには
色とりどりの食べ物が置いてあった。
その隅にあるロウソクに火をつけて
線香に火を移してそこに立てる。
そして俺は、手を合わせ目を閉じた。
小学校2年生の時から
君は当たり前のように隣にいたね。
君と散歩によく行っていたな。
特に君と僕の1番のお気に入りの場所は
夕暮れ時の海だったね。
夕陽が沈むのを2人で見て、
それから家に帰るのが
日課になっていたぐらいだ。
…いろんな記憶が蘇ってくる…
次第に君と一緒にいる時間が少なくなって
君に寂しい思いをさせていたね…
それでも俺は、君といる時間は幸せだったよ…
…そんな君は…
…俺の事をどう思っていたのだろうか…
…君が大変な時に側にいてやれなかった俺を…
…君はどう思っていたのだろうか…
…きっと…悲しかったんじゃないかなぁ…
…きっと…ツラかったんじゃないかなぁ…
…そう思うと…自然と涙が零れ落ちる…
…そんな俺を心配したのだろう、
君の兄が俺の隣に寄り添う形でその場で座り込む。
「…美々はきっと幸せだったと思うよ…」
…隣に座る君の兄がそう言っているように感じた…
…そんな姿を見て…俺の涙は止まらなかった…
君が旅立った時の状況を
父親から詳しく聞いた。
玄関の鍵を開けていたら
君は海へ行こうと1人で
歩いて行こうとしていたんだね。
途中で父親に止められたって聞いたけど。
…最期まで無茶していたんだな…
そして旅立つ直前、
父親が出掛ける時に君に声を掛けた。
「…じゃあ美々、ちょっと行ってくるからな」
その言葉を聞いた君は
伏せていた顔を上げて
父親の顔を見上げたんだね。
…その直後…
…君は力なく倒れて…
…君は旅立って行ったそうだ…
そんな君の話を聞いて
俺の目から雫が更に零れ落ちた。
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