初めての夜

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ー数ヶ月後。 今日がバレンタインだってことも、彼女に言われるまで忘れていた。 バレンタインと言えば、何度かチョコをもらったことはあっても、 彼女からの本命チョコなんて、初めてのこと。 だけど、その彼女が朝、 「バレンタインのチョコを冷蔵庫に忘れたから、放課後、一緒に家に来て取りに来てほしい」 って、言ってきた。 当日、持ってくるのを忘れちゃうなんて、そんな抜けてるところも可愛いなって思っちゃう俺。 放課後、一緒に彼女の賃貸マンションまで行くと、 「あがって。」 って、てっきり、ドアの前で待たされる展開だと思ってたから、 「え?う、うん。おじゃまします。」 って腑抜けな声を出してしまった。 付き合って、部屋まで入室許可されたのは初めてで、この展開に期待しちゃう俺。 つい、ワンルームに置かれたベットに目がいって、ゴクリと唾を飲む。 落ち着け落ち着け…。 そんな俺の動悸など気付きもしない様子で、小さなテーブルにある座椅子を指差し、 「座って」って、言うと、 冷蔵庫から、さっそく包装された包をだして、 「はい、これどうぞ。ごめんね、わざわざ来させちゃって。」 って、渡してくれた。 「ありがとう。空けていい?」 「どうぞ。」 「頂きます。」 さっそく一欠片を口にすると、口の中で甘くすぐに溶けた。 「美味しい。」 「ホント?手作りなんて久々だったから。」 「手作りだったのー?買ったものかと思った。嬉しい、ありがとう。一緒に食べる?」 そう言って、彼女の口にも一つ入れてあげた。 「まぁ、手作りって言っても、買ったチョコ溶かして生クリーム加えて…それだけだから美味しいはずだよね。 あっ、気持ちは込めてるから!」 そう言って笑った。 出されたコーヒーとチョコを食べると、 「今日バイトの曜日だったっけ?」 と聞いてきた。 バイトの日は、一緒には夕飯食べずに公園で少し話してから、早めに解散してたから、 俺は、そろそろ帰れと言われてる気になって罰が悪くなり答える。 「今日はバイト休みなんだ…。」 「じゃあ、良かった!せっかくだから、ゆっくりしてって、ここで夕飯も食べよ。」 そう言って、彼女がパスタとサラダとスープを作って出してくれた。
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