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「冬李さんもコーヒー飲みますか?」
「あぁ、うん、頂こうかな」
コーヒーを淹れてくれるその背中を眺める。
つきあいは長くなった。
長くなったその中で思う。
月海は藍河以外には笑顔を絶さない。
特に七夕ちゃんと息子の前では。
あげはちゃんにはよく愚痴を言いに行ってるみたいだけど。
「どうしました?」
無造作に結ばれているその髪に無意識のうちに触れていた。
それをビックリすることもなく、クスクスと笑いながら聞いてくる。
「……いや、結び直す」
「ありがとうございます」
何年か前、結婚していた頃の月海はいつもキチンとしていたのに、離婚して帰ってきてからはずっとこんな感じ。
それでもいいと思うが、たまにヤバい時がある。
今日はまだマシな方。
そして毎回ソレを直すことが俺の役目。
「できた」
「さすがです、冬李さん」
これを褒められても…
「ハイ、コーヒーです」
「ありがとう」
習慣づいてるこの役目も、たぶん月海に彼氏でもできたらやらなくなるだろう。
そんな気がして、ふと寂しいと…
休憩室を出ながら、誰にも気づかれないように苦笑いを浮かべた。
なまじつきあいが長くなると、この感情がなんなのかわからなくなる。
家族みたいな…
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