第一章

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ダカラ タビニデタ  だいすきな   かのじょのすきな    ラピス・ラズリ   たからものだと    びんにつめこむ     にじをみた      でんぽうがきた       たびにでる 大好きな彼女が好きだったラピスラズリ 「ラピスラズリは海を越えてきた青」と彼女は昔図書館で読んだ本に書いてあったと言っていた 「宝物」とラピスラズリを詰めた無色透明の瓶を空にかざして 空の青とラピスラズリの青を重ねていた彼女だった 空に虹を見つけたときは 変わりゆく、虹の色を見届けていた彼女だった ある日、僕のもとへ電報が届いた 「ウミヲコエテキタ、アオニアイニイク」 君からの電報を今もう一度読み返す僕 僕は砂浜に座り込みリュックから小さなビンを取りだした ラピスラズリの入ったビン 無色透明のビンに入ったラピスラズリを空にかざしてみた いろんな角度にかざしては光と色のコントラストを楽しんだ そして地平線へとビンをかざした時に 側にいてくれた君はいつもこんなにも遠くを見つめていたのだと 初めて気づいた 地平線へかざされた小瓶の向こう側に 空と海とラピスラズリの青が重なって見えたとき 涙で青が滲んでは流れた だから旅に出た、君 君の見つめていた青に出会えた僕 遠くに止まって見えていた船が地平線の彼方へと行くなかで 波の音は繰り返されていく 海鳥たちが声を響かせては翼を広げ風となり 飛びかうなかで 僕は遠く離れた君の側に行けた気がした 君は出会えただろうか 海を越えてきた青に
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