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「いっつも叩くんだから」
きつねの面をたたく、甲高い音がこだました。
「風がふくから、しかたないだろ」
笑いながら、よこに腰かける。
「そればっかり」
いつものように、ふたりはならんでいた。
「アイス、半分くうか」
「全部ちょうだいよ」
「おまえみたいに、ひとがよくねぇよ」
「なによ」
「もう夏祭りだろ。また、きた人のために走り回るつもりか」
「みんな。お願いしてくるんだもん」
「仕方ねぇな。ずっとそばにいてやるよ」
「ずっとだよ」
白猫が、よこを通りすぎる。
そして、振りかえった。
そこには、ふたりの姿はなかった。
ただ、稲荷神社の社殿と、それに寄り添うご神木があるだけだった。
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