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あ、…泥
那央先輩の服についてる。
わたしを抱えてきたからついちゃったんだ…
「那央先輩…ごめんなさい。服汚しちゃって」
「謝るな。服くらい汚れたぐらいで。それにおまえに怒ってるんじゃない」
「…え?」
わたしに怒ってない?
「誰にでもない、自分にだ。自分に腹が立ってる」
わたしの足に湿布して包帯を巻いて立ち上がって窓辺のソファーに座った。
肩に掛けたタオルで顔を隠すようにして窓の外を見た。
窓から潮風が入ってくる。
那央先輩はその後は何も口をきかなかった。
那央先輩?
わたしの頭をそっと撫でるとドアを開けて外へと出て行ったまま。那央先輩は夜明けまで戻ってくることはなかった―――
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