『若恋』 那央の恋

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さくらさんと並んで那央先輩の写真を観ていく。 個展奥の方で、ざわざわと声が上がった。 「何かあった、のかな?」 「コンテスト入賞の写真だよ、きっと。一番奥に飾られてるから」 さくらさんは嬉しそうだけど、わたしの足取りは重い。 那央先輩の好きな子の写真が飾られてると知ったから。 次々に観てく写真に、那央先輩が大好きだと胸が痛くて泣きたくなる。 あと、一枚… 足が動かない。 最後の一枚は那央先輩の好きな子の写真――― あっ、 足がもつれて、べしゃっと冷たい床に転んだ。 個展に来ていた取材の人や一般の人たちがたくさんいたのに。 みんなの視線がわたしに集まってるのを感じて立ち上がれない。 切なくて苦しくて、 我慢してた涙がこぼれ落ちた。 「…っく」 泣いたらダメ… 那央先輩の個展をメチャメチャにしちゃう。 立とうとしたけど、震えて力が入らない。
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