『若恋』 那央の恋

8/31
前へ
/33ページ
次へ
「…築島、くん!待って!」 立ち上がろうとしても足に力が入らない。暗闇で震えたまま立ち上がれない。 怖い…ひとりぼっち… 風の音と草木が揺れて気が狂いそう。 歩けないよ、足首をひねったみたい… 「つき…しま、くん」 怖いよ… 誰か助けて… わたしたちが最後の組だったから誰もここを通らない。 「…ひっく」 涙がとまらない。 後から後から溢れては落ちてく。 わたし、いつもこんなドジばっかり… 転んだくらいでひねっちゃって… 悲しくて。 苦しくて。 ボロボロ涙がこぼれてく。 惨めで悔しい。 ひっく 反対側の足に力を入れて立ち上がって歩いた。 だけど歩いてはすぐにまた転んで、 ベシャッ 土の中に手をついて泥だらけになった。 両手も服も土だらけ。 もう悲しくてやるせなくて涙がとまらない―――
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

326人が本棚に入れています
本棚に追加