第一章 依頼の主は幽霊

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「和尚!!」 彼女の声に、反応すると「よお」とばかりに手を挙げて笑う。 「なんだ、美咲。また探偵さんに依頼でもあったか」 「あのね、何度も言うけど。私は探偵でもなければ、霊能力者でも無いの」 「じゃあ、なんであちらさんはお前に依頼してくると思う」 「それは、見えるから!」 「正解!」と大爆笑しながら、言葉を続ける 「じゃあ、その可哀想な人達を助けたいとお前は思わないのかね」 「あのね、可哀想な人でなくて。正しくは霊ですけど何か?」 「霊も、人も根本的には同じ物だと教えたのをお前は忘れたのか。馬鹿者!」 和尚はそう言うと、手に持ったびしょびしょのタオルを彼女に投げつけた。 彼女はそのタオルをキャッチすると、ブーッとふて腐れながら大きな岩に座る。 「でもさあ、和尚。アタシ、普通の女子高生なんだよ。和尚みたいに坊さんじゃないし  普通に暮らしたいのに、いつも霊から『困っているんです』って助けを求められても困るのよね」 「そういう俺も、お前さんが受けた依頼を持ち込まれても困るのだがね」 「あ、そう。じゃあいい」 手に持った、タオルを和尚に渡すと彼女は傷ついたという顔で元来た道を戻ろうとする。 「美咲よお。お前さんも、好きでやってるんじゃ無いのは分かる。でも、霊たちはさまよっている訳。  それを助けられる人は、少ないって話しをしたのは覚えているだろ」 「・・・・」 美咲は、歩みを止めると声に耳を傾けた。 「霊の声が聞こえる人は少ない、もっと言うと見える人すら殆どいない」 「・・・・」 「だから、霊たちは困ったら見えたり聞こえたりする人に助けを求める」 「アタシだって、そんな能力必要無いのよ。普通に生活したいだけなのに」 「仕方ないじゃないか、産まれもった能力。  それは、困った霊たちを助けなさいって仏様が仰っているってことだよ」 そこまで言われると、黙っていられないのが彼女の悪い所。 「じゃあ、言わせて貰うけれど。和尚はどうなのよ、私より適任だとおもうけれど」 彼はヤレヤレという顔をするとこう言った。
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