第一章 依頼の主は幽霊

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「俺は、坊主。分かり易く言うと、カウンセラーなんだな。  霊の声を聞いて、道を説くのがお仕事。間違っても解決に導くことはしない。  こうしたら、良いのでは無いですか。とお経で、道を説く」 「はあ・・・・」 「霊媒師は、違う。解決方法を模索する、言うなれば人間と霊との間の弁護士だな。  俺はカウンセラーだから、提案するけどそれ以上深入りしない」 「和尚、言いたい事は分かったわ。でも私は霊媒師でも、坊主でも無いんだけど」 「仕方ないな、霊媒師ってのは産まれもった才能だから諦めろ」 美咲は今年の夏に入って何度目かのため息を付いた 「私は、カウンセラーの方が良いんだけど」 「それはだなあ・・・」 「分かってますよ!選べる物じゃないんでしょ。」 「なんだ、説明しなくても分かってるじゃないか」 彼は、嬉しそうに頷いた。 「あのさ、和尚。私のカウンセリングもしてよ、でないと解決法なんてわからないし」 「そうだな、まだ美咲は半人前だからな。俺が付いてる大丈夫だ」 「はいはいはいはい、お願いしますよ。お師匠様」 あきれ顔の美咲と、ニヤニヤとしたり顔の和尚。 2人は、しばらくして本堂に向かったのだった。 本堂で、和尚夫人に淹れて貰った麦茶を飲みながら、作戦会議が開かれていた。 風鈴の音に、グラスに当たる氷のカラカランという音が涼しさを誘う。 ついでに、和尚の唇も紫色に変わり寒そうだ。 「おーい、雅代。俺には暑いお茶をくれないか」 滝行で冷え切った彼は、ため息を付きながら腕をさする。 「あー、生き返るわ」 美味しそうに冷たい麦茶を飲み干すと、昨夜の顛末について彼女は話始めた。 昨夜・・・眠ろうとした彼女を呼ぶ存在が窓の外に存在した。 厄介ごとであることは間違い無く、無視しようとした矢先。 部屋の至る所で、床や天井が軋みバチッ!パキッ!とラップ現象が発生した。 「ああ、もう!聞けば良いんでしょ、聞けば!!」 彼女は、ガバッと布団から起き上がると窓に向かって歩き出した。
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