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しかし、そこには夜の闇と細く消え入りそうな三日月が浮かんでいた。
「何よ、人を呼んでおいて無視するのね。良い度胸じゃない。もう呼ばないでよ」
開け放った窓のカーテンを引こうと、手を伸ばした瞬間・・・・。
三日月が、一気に膨張して満月の様に輝き出す。
「あ、いらっしゃったわ」
彼女は、真っ直ぐにそれに対峙すると。一つ一つを見逃さないように、しっかりと目を開けた。
こういう霊の依頼は、実は具体的に提示されることは少ない。
色々と、見えたり聞こえたりすることから推測して解決方法を探すしか無いのだ。
満月の様に輝く球体から、サーッと窓際に向かって黒い階段が伸びて来た。
そして、そこからは若い女性らしい着物姿の影が出てきた。
「お願いします・・・」
そういうと、目の前ですぅっと消えてしまった。
そして、そこに残された残像に手を伸ばす。
小さな行李に、布に巻かれた何か細い髪の毛に似た筆の毛みたいな物。
そして、べっ甲に螺鈿の貝細工が施された美しい和の櫛が入っていた。
「これを、探せって事ですか」
幻の筈なのに、手に取れるその行李箱には小さな紙切れが添えられている。
紙には、ボールペンで『 和子 満15歳 』と書かれていた。
「どうすれば良いんですか、これを。これだけだと、何も分からないです」
そう言う声も虚しく、行李箱も目の前の光も一瞬にして消え失せた。
「ちょっと、これじゃあ分からないってば」
彼女は文句を良いながら、メモ書きを作ったのだ。
・・・と言うわけなのよ。
と、話しを続けるとメモをちゃぶ台の上に置く。
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