効かない薬

5/7

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 「憂鬱病ともなると、これは私たちだけに負えるものではない」  医師の手回しにより、更に優秀な科学者たちが呼ばれた。  憂鬱病を研究し、治療薬を開発せんとしている人々だ。  「かなり稀な病気なので、重要なサンプルが取れるかもしれん。みんな心して当たってくれ」  リーダーらしき青年が言うと、研究者たちは好奇心と緊張が入り混じった顔でうなずいた。  「もし憂鬱病だとしたら、研究チームが開発したこの先進薬で、少しは症状を和らげられるはずだ」  「ああ、しかしまだ憂鬱病と確定した訳ではない。他の可能性も視野に入れていかなければ」  「お金はいくらでも出します。あの子を、あの子を助けて下さい」  母親の悲痛な叫びが、お茶の間に響く。  「かわいそうに」  「ママ、あの子死んじゃうの?」  人々の間で関心が高まり、やがて国内でもトップクラスの名医たちがコウイチ君を救うため、彼の治療に当たることになった。  「日本中の人々がコウイチ君の快復を願っています。我々はその想いに答えねばならない」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加