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それからボクは、まるで抜け殻のような毎日を送った。
会社もボクの状況を考慮してくれて、病欠という事で長期の休職を許可してくれた。
食事もほとんど喉を通らず、横になっても眠る事もできず、ただ毎日泣き暮らしていた。
そんなある日だった。
玄関からガチャガチャと鍵を開けるような音がした後、ドアを開ける音、そして閉める音が聞こえてきた。
ボクはぼんやりとした頭のまま、視線を玄関へと移した。
「ただいま」
そこには、あの日、あの記念日の朝に見たままのキミが、微笑みながら立っていた。
靴を脱ぎ、こちらに向かって歩きながら、矢継ぎ早に聞いてくるキミ。
「どうしたの?そんなに驚いた顔して。おかえりって言ってくれないの?ていうか、どうしてそんなにやつれてるの?あれ?今日休みだったっけ?」
ボクは混乱していた。
あの日、確かにボクはキミの遺体を、警察署の遺体安置所で確認したんだ。
ご両親のご厚意で、通夜から骨揚げまで居させて貰った。
あれは夢だったのか?
いや、そんなはずは。。。
「ねぇ、ホントにどうしたの?」
キミが笑っている。
ボクの大好きだった笑顔。
キミの笑顔。
ボクは━━━━━━━━。
もしも今ここにいるキミが、この世のものではなくても、ボクを道連れにする為に現れたのだとしても、そんなこと、もうどうでもよかった。
おかえり。
キミの帰る場所がボクのところでよかった。
おかえり。
もう絶対に離さないよ━━━━━。
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