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何度かけ直しても、呼び出し音が鳴るだけで、繋がらない。
電話が切れる直前に聞こえた全ての音で、何が起きたのかは容易に想像できた。
ボクは店を飛び出し、キミを探した。
キミの会社から、ボクの予約していた店までの道。
キミを探して走るボクの横を、救急車とパトカーと、事故処理車が走り抜けていった。
心臓が握り潰されているのかと思うほどに痛んだ。
嫌な想像が拭いきれず、その場に崩れ落ちそうになるのを必死に踏ん張り走り続けた。
そのボクの目に、次々と飛び込んでくる光景。
キミの会社からそう離れていない交差点。
そこに集まる人だかり。
渋滞して、ゆっくりと進む車の列。
道路脇に停められた、赤色灯を回したままの警察車両と、ボンネットが大きく凹んだ乗用車。
そのそばで、事故の状況のやり取りをしているであろう、項垂れた男と警察官。
救急車は、もういなかった。
代わりに、跳ね飛ばされたキミが倒れていたらしき場所に、血だまりが残されていた。
ボクは、よろよろと歩み寄り、
「あの。。。もしかしたら、跳ねられた人、ボクの知人かもしれないんです。。。どこに運ばれたか、教えて頂けないでしょうか。。。」
そう訊くのがやっとだった。
気付くと、ボクは警察署の遺体安置所にいた。
目の前には、顔に白い布を掛けられたキミ。
事故の状況を署員から説明されたかもしれない。
でも、覚えていないし、理解もできなかった。
受け入れられなかった。
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