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その日までは毎日のようにくだらないことを伝えてきたのに、ぱったりと。連絡がこなくなって三日目に、瀬尾のほうからメッセージを入れてみたが反応はなかった。 何かあったのかなと気になってはいたけれど、もしもそうなら潤か高宮さんから何か連絡があるはずだし、とどうしようか迷っているうちの、五日目の朝。 瀬尾家のインターホンが鳴ったのは、午前9時すぎ。 「はいはいはい、っと」 洗濯物を干し終わった母親が出ようとしたのを制して、バイトをやめたばかりで暇をもてあましていた瀬尾が玄関へ向かった。 「はーい、っと、あ、潤」 わーお、と瀬尾の口がぽっかり開いた。 それほど目の前に立つ潤はスタイリッシュだった。 「すごいね、どしたの」 黒のロングコート、真っ黒で細いサングラス。 漆黒の高級車の前に立つ彼は見たこともないほどカッコよかったが、午前中ののどかな住宅街ではこれ以上なく浮いていた。 「瀬尾さん、今日ヒマ?」 「え?うん。何も用事ないけど。なに?」 「じゃあ乗って」 「え?どっか行くの?」 「時間ないんだ」 「じゃあ、ちょっと着替えて来…」 「いいよ、そのままで」 「だって俺」 家着のフィッシャーマン・セーターとジーパン。 古くも汚れてもいないけれど、どっちも家の中で着る服前提だ。 「いいよ、それで。瀬尾さん、スタイルいいからかっこいいよ。だからさっさと乗って」 フル・スタイリッシュな潤に言われても嬉しくないよと思いながら、 「どっか行くの?」 重ねて聞いてみたが、潤はくい、と顎で車を示して自分もすぐに乗り込んでしまう。 せめて財布ぐらい持ってくると言っても、帰りも送るし必要なものができたら俺が買ってやるとまで言われればそれ以上逆らえない。 ましてや今の潤は怖いぐらいに、彫刻のように無表情だ。
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