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「うん…。そうだね」 頷いた瀬尾に、 「だったら来てよ。日本を離れる前に瀬尾さんに会わせておかないと、あいつはずっと忘れない。日本の事も瀬尾さんの事も、なにもかも憶えてもいないふりをしながら、ずっと一生忘れない。そんなタチの悪い性格してんだ、あいつは」 一生。 潤の言葉に、思いの外衝撃を受けている自分に瀬尾は驚いた。 このまま、一生? 一生会えないってこと? そんなことはない。 そんなことは。 ない、はずだ。 でも、可能性は。 瀬尾は混乱する頭を抱えたくなる。 一生会えないなんてあるはずが。 でも。 だけど。 白。 さっきからずっと痛むばかりのこの胸は、いったいどうすればいいのか。 瀬尾はまた、ぎゅっと胸のあたりのセーターを掴んだ。
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