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「…ねえ」
「やだ」
「何も言ってないよ」
「やだ」
「ねえ、瀬尾さん」
「やだ」
「ちょっと…離してよ」
「…」
「瀬尾さんってば」
「やだ」
「やだじゃないでしょ」
「やだよ」
瀬尾は自分の両腕の中に、白の小さくて細い体を閉じこめて抱きしめて離さなかった。
「瀬尾さーん」
呆れたような白の声にも、もう騙されない。
「ねえ、帰るって言わなかったのは悪かっ…」
柔らかな頬に手を添えて、あの日、北風の中で白からもらったキスでその唇を塞いだ。
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