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ゆっくりと、瀬尾が言う。 「俺ね、金はないけど」 「知ってるよ、貧乏人」 「ひどいね」 「ほんとの事だろ」 「無職だし」 「バイトやめたの?」 「やめた」 「なんで」 「就職活動のため」 「就職すんのか」 「家から通える美容室に」 「…お母さん、喜ぶな」 「おまえも喜んでくれる?」 「え?」 「俺が金ためて、会いに行ったら」 右手だけをソファから離して白の頬に滑らせ、その距離を縮める。 「おまえも、喜んでくれる?」
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