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「瀬尾ちゃんが言ってた。何のためらいもなく無表情にナイフを手ではらったって」 「…」 「つきまとい行為なんか、ちょっとお説教くらって無罪放免だ。とくに男と男だし。対女性の事件より軽く扱われかねない。警察つったって人間の組織だかんな。そのへんは透が一番よく知ってんだろ。だから、きっちり罪状作ってあいつを豚箱にぶち込みたかったんじゃねえかなあ」 「だからって…そんな」 「透」 大矢の笑顔が明るくなる。 「透はほんとに和の事が好きだなあ」 高宮が苦笑いを浮かべた。 「からかわないでよ」 「からかってねえよ?だって好きだろ、かずの事」 「そりゃ…そうだけどさ」 「じゃあいいじゃん」 「あなたには負けますよ」 「んー?」 「和のためならAVにだって出ちゃうような事、普通じゃできないよ」 「だって今更評判どうこう気にするような職業じゃねえし、この業界にはそっちの人も多いし。むしろ、最近面白いことしてるんですってね?って演出家の人とかに声かけられる事、増えたぞ」 「それ、あなた、狙われてるんじゃないですか」 「ああ?」 「自覚したほうがいいと思うよ。わりとあなた、そっち方面の方々にモテるんだから」 「それは透もお互い様だろ」 「…やめよう、この話は」 「なんで?」 「なんで、ってあなた」 「ね、なんで?」 柔らかな間接照明だけの部屋で、大矢が微笑む。 童顔のその笑みは、幼くもあり、なのにどこか妖しい。
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