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「親子ほど年の離れた二人が愛し合って、俺たちが生まれた」 驚きに目を見開いた瀬尾に、白は目を細めて笑う。 「世間じゃ色々言われたらしい。そりゃそうだ。今時でもさすがに30も年が離れてりゃ、ましてや一方は大物政治家でちゃんと結婚もしてて、子供も孫もいる。スキャンダルとして活字になる直前に、母親は日本を離れた」 自分の妹が結婚してアメリカに住んでたからね、と。 「アメリカで俺と潤くんを産んだ母親は、それからそこでずっと暮らした。21年後に交通事故で死ぬまで」 目もとを歪めた瀬尾に、いいよ気をつかわなくても、もう2年もたってるんだから、と白が言う。 「父親は俺たちが生まれたときに、きちんと認知して養育費も馬鹿みたいな額を毎月送ってくれていた。ただ、母親の妹が潤くんを溺愛して、どうしても養子にほしいと言い出した」 『心が弱い』と、潤が言った母親。 「一度流産を経験したあとはもう子供を望めない体になっていた妹は、一緒に住んでいるうちにどうしても潤くんが欲しくて欲しくてたまらなくなってしまったみたいで」 少し、苦笑いを浮かべる。 「俺は母親似で、潤くんは父親似。見た瞬間に母親の子供であるのがわかる俺じゃなくて、天使みたいに可愛かった潤くんに溢れるほどの愛を注いだ。異常なほどに」 瀬尾は黙って話を聞いている。 「母親は潤くんと妹の養子縁組を認めるけれど、俺と潤くんは必ず一緒に住む事と、潤くんが理解できる年齢になったときにはきちんと説明するという条件をつけた」 まあ、妹の精神状態がそれだけ危なかったってことなんだけどね、と。 「俺と潤くんはそんな事は全く知らず、それまでと同じように一緒に育った。一緒の部屋で寝て、一緒の部屋で起きて、一緒に学校へ行き、一緒に遊んで」 その頃を思い出しているかのように、白は楽しそうだ。 「進学を考える年になって、潤くんは大学へ、俺は演劇の学校へ進んだ」 そこで口もとをきゅっと結んだ白の視線が、瀬尾から逸らされた。 「その3年後に、母親が死んだ」
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