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「たぶん、それまでも自分の思うがままにやってきた人生の、その終盤に入った自覚のある父親は、少し我が儘の度が過ぎた」 「我が儘って?」 「俺を手元に置きたがった」 「…?」 「国に戻さず、自分の目の届くところに置こうとしたんだ」 「お父さんだから、自分の子供が可愛かったんじゃないのかな」 「うん、可愛かったんだろうね。常道を逸して」 「じょうどう?」 「そう。知らない間にパスポートとカードを取り上げられていて、買い物は父親の行きつけのデパートメントの外商部でするように言われて、まとまったお金は持たせてもらえなかった。最初はわけがわからなかった。自分に何が起きているのか、誰が何をしているのか。何をしようとしているのか」 白の表情は穏やかだった。 「しばらく顔を見せなかった透さんがある日、父親の家にほぼ軟禁状態でいた俺のところにやってきて、辛そうに言ったんだ」 「日本に、ずっと居て欲しいと父親が言っていると」
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