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「高宮さんが怒らなかった?」
「怒ったね。最高に怒った。あんなに怒った透さん見たの、はじめてだった」
思い出して、苦く笑う。
「透さんには申し訳ないけど、俺は絶対に譲らなかった」
「こんなとこにいたくないから、ってはっきり言ったら透さんは黙った。自分が片棒を担いでいるっていう負い目があったんだろうね。そこを突いた俺はずるい」
「透さんだって一生懸命親父を説得しようとしてくれてたのに。だったらせめてこれぐらいはさせろって、透さんは制作会社と監督に話を通して俺の良いように契約をねじこんでくれた」
「最初はそんなに乗り気じゃなかった制作会社のほうも、一本目がわりと評判が良かったから条件ものんでくれた」
「それから透さんは、死ぬほど嫌だったろうに、俺の仕事のマネジメントのような事もしてくれてた。危ない事に巻き込まれたり契約違反をされていないか、目を光らせてくれていた」
「潤は?」
「潤くんには何も言わないで始めた。お母さんの事もあったし、心配かけたくなかったから」
「でもバレちゃったんでしょ?」
「うん。俺に聞いても言わないだろうって思った潤くんは、様子がおかしかった透さんを問い詰めて。でも翔さんが口を割らなかったから…笠岡さんに聞いたんだ」
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