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その夜。
眠っている瀬尾の隣。
誰かが起き上がる気配がし、そのまま音もなく布団を抜け出た。
もう一人が、自分の布団を持ち上げて迎え入れる。
そこに収まり、二人は体を寄せ合う。
長い腕が小さな体を抱きしめ、隙間無く互いに相手の体を感じる。
幼い頃から何かあるたび、こうしてきた。
悲しみも恐怖もない、二人だけの世界。
互いの体温に包まれて、柔らかなこの世界をおびやかすものの侵入を許さなかった。
そのはずだったのに。
「Haven't you told him anything yet?」
耳もとに聞こえる声はいつものように甘く、
「A little bit longer…」
溜息のような声が
そう答えた。
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