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『 白。 不器用で優しい、生意気な乱暴者。 俺はおまえからたくさんのものをもらった。 この両手にあふれるほどの、幸せで温かくて、愛しくて優しいものを。 「悠希」を、「弟」を、「母親」を、「家族」を取り戻してくれた。 なのにおまえは、俺に礼をと言って、何ももっていないからとキスをくれる。 そのキスにすら、何の価値もないのだと言わんばかりの、おまえ。 白。 どうか憶えておいて欲しい。 おまえを愛している人たちがいて、おまえを大事に思っていてくれる人たちがいて、その人たちをおまえ自身が愛しているのなら、それだけでおまえは世界中のなにもかもを持っているのと同じなんだって事を。 俺はお前や高宮さんみたいに難しい話や言葉はわからないけど、誰かに愛される幸せだけは知ってる。 おまえのお父さんはやり方を間違ったかもしれないけど、確かにお前を愛していた。 高宮さんも潤もおーちゃんも笠岡さんも、みんなおまえを愛してる。 みんなが、おまえが自分自身を大事にしてくれる事を祈ってる。 俺の中、いままで出逢った人とは全く違う場所に、おまえがいる。 自分の中にそんな場所があることすら知らなかったような、そんな奥まったところに白いパーカーを着たおまえが立っている。 それは、俺をとても幸せな気持ちにしてくれる。 おまえがいるその場所に、何ていう名前をつけたらいいのか、俺にはまだわからない 』
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