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02
結局瀬尾のバイトは今日で1ヶ月、続いている。
いつもたいていは同じスタッフで、出演者だけがほぼ毎回違う。
男同士だったのは最初の一回だけで、あとは全部おっぱいが大きかったり小さかったりするおねえちゃんたちが出演している、普通のAVだった。
あれ以来、白とは一度も会っていない。
ふと思いついて、にいちゃん(高橋というのだと、2回目の現場で教えて貰った。ちなみにみっつも年下なのに入ったのが一ヶ月先だったから高橋先輩と呼べと言われたけどめんどくさいから呼んでない)に聞いてみた。
「男同士のAVって結構あんの?」
「ああー?なんだぁ?興味あんのかよ、瀬尾ちゃん」
弁当の買い出しの途中で、高橋がにやにやと笑う。
今日はスタッフの数が多いからと二人で買い出しに出たのだ。弁当は高橋、瀬尾は重いペットボトルの袋を下げている。後輩だから。
「や。俺は普通におねえちゃんのほうがいい」
「そうか~。俺は人妻系がいいな。こう…30代とかのほうがいろいろ知ってそうだし、こう、手取り足取りだな」
にやにや笑いがすけべ笑いになった高橋君は、少しだけイケメンかすってるのにこういうところが惜しいんだよなと瀬尾は思う。
「俺最初にバイトに来たときさ、男同士だったじゃん?だからここはソレ専門なのかと思った」
「ああ、アレは特別。ウチで出してるゲイのAVはリュウのシリーズだけだわ」
「リュウっていうの?あの子」
「芸名だろうけどな。本名は知らねえよ」
「へえ」
「なんだなんだ、興味あんのか?あいつに」
「だってさ、見た感じAVなんか出そうにないじゃん。大人しそうだし」
「大人しいかどうかはさておき。リュウはうちの社長の知り合いみたいだから、なんか特別扱いだな」
「特別扱い?」
「そうそう。本番なし、フェラはさせるけど本人はやらない、道具なし、キスもダメ、その他イレギュラーな事は全部あいつの承諾なしには出来ない」
「へえ…」
じゃあ、この間言ってた本番はやってないよ、っていう言葉は本当だったんだな、と思う。
んで、ちょっとほっとする。
あの子の言葉を疑っていたわけじゃないけど、やっぱりなんか安心した。
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