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「ふーん、瀬尾さん、舌入れたんだ」 見かけによらずやるね、と背後から冷たい潤の声。 「潤くん!いま突っ込むとこそこじゃない!」 「とりあえず潤!もうちょっと待って!!」 白と瀬尾の声が重なって、結局二人のどっちの表情もよく見えない潤が言った。 「ひとまず今は黙ってるけど、瀬尾さん」 「なに?!」 じたばた暴れる白を押さえつけるように抱きしめながら、瀬尾が叫び返す。 「今度舌入れたら、ぶん殴るからね」 「わかっ、た。ちょっ…おい」 「離せよ!離せったら!!」 いっこうに大人しくならない白に、瀬尾が手を焼く。 『普通さ、空港での別れの場面てもうちょっとこうロマンチックなもんなんじゃないのぉ?!』 焦る瀬尾をよそに、白は叫んだ。 「離せ!!」 「離したら、ちゃんと話聞いてくれる?黙って、口挟まないで、ちゃんと真面目に聞いてくれる?!」 思い切り力を込めた両腕の中の相手に、必死に問いかける。 このチャンスを逃せば、もう二度とこの子は戻ってこないかもしれないんだと思って。
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