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VIP専用の待合室を出て、搭乗手続きに向かう。 空港は明るく、そこかしこで別れの悲しみや再会の喜びが繰り返されている。 瀬尾達はまさにその中の一組だった。 「じゃあ、またね、瀬尾さん」 潤が右手を差し伸べてきた。 「うん。いろいろありがとね」 その手を握り返し、瀬尾も笑う。 潤の横に立つ白に、視線をやる。 白はごく普通の表情で、瀬尾を見ていた。 「元気でね、瀬尾さん」 潤と同じように、右手をあげる。 「うん。待っててね」 「やだよ」 からっと明るく笑い、 「さっきも言ったけど、そんな無駄な時間とお金使うんじゃないよ」 そんな事を言うから、 「待ってろってば」 握った手を思い切り引いて、 「わっ」 小さな体を、強く強く抱きしめた。 「待ってろよ」 「ああ、もうあんたはほんとに」 「待ってろってば」 「はいはい」 「そんな、信じてないみたいな言い方嫌だ」 「わかったわかった」 「俺、行くから」 「うん」 「会いにいくから」 「泣くなって。ブサイクになってるよ」 「待っててよ」 「はいはい」 瀬尾の肩を優しく叩いて、 「わかりましたってば」 目を閉じた。 瀬尾のぬくもりに抱かれ、静かに微笑む。 そろそろ時間だよ、と潤が優しい声でそう言うまでずっとそうしていた。
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