03

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その後の撮影は普通に女の子主演のAV撮影が主で、再び白と会ったのは半月程たってからの事だった。 「はーざーす」 慣れた挨拶をして部屋に入る。 「うぃーす」 「お~、いい所に」 スタッフの顔ぶれはだいたい同じだ。 「今日は?」 セッティングを手伝う合間に高橋に聞いてみると、 「リュウ」 と短く答えて、手にしていたコンドームの箱の中身を数え始める。 「足りるかな」 「また俺買いに行くの嫌だよー」 部屋の中をぐるっと見回すと。 ぴこぴこ いた。 忙しく動き回るスタッフたちの中で、一人だけベッドの上に体育座りで相変わらずのゲーム三昧だ。 何度か見た姿で、ある程度見慣れてはきてはいるはずだったが。 「?」 白い顔に、なんだかいつもとちがう違和感を感じて瀬尾はその顔をじっと見つめる。 何がちがうんだろう。 でも、確実になんか違う。 うまく言葉にならない奇妙なものにぞわぞわする感じがして、うーん、と唸る。 すると、それが聞こえたのか、白がこっちを向いた。 「…なに、あんた」 不機嫌そうな声だった。 「うーん…」 なんだろう、このむずむずする感じ。 「なんだよ、気持ち悪いな」 あ、と気づく。 「瀬尾おー!ちょっとこれ持って手伝ってはやくううううう!!」 高橋の大声に、びっくりして振り返る。 くそ重い機材の位置を変えようとしている高橋が、怒ったような縋るような気持ち悪い目でこっちを見ている。 慌てて駆け寄って支えてやるが、頭の中は白の事でいっぱいだった。 白は、なんだか知らないけど物凄く疲れてる。 なんでみんなわかんないんだろうと瀬尾は思う。 髪に寝癖ついているのは前と同じだけど、顔色はいつにも増して真っ白だし目の下にはうっすらと隈も浮いている。 こんな子にAV撮影なんかさせて大丈夫なんだろうかと、ちょっと不安になるぐらい。 だけどその日も、白はしっかりエロい演技をして午前も午後もかけてたっぷり3本分の撮影を終わらせた。 でもお昼に用意したお弁当はほとんど食べなくて、午後はゲームの合間にぼんやりとした表情で座っていたりもしていた。 ちょっとどうしちゃったのこの子、と思うのだが、余計な口を出せばまた不機嫌な口調で睨まれるのはわかっていたから、おろおろとするばかりで何もできなかった。 今日はどうしておーちゃんや潤が来ていないんだろう、とこの場にいない二人にも縋る思いの瀬尾だった。
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