04

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おばちゃんが呼んでくれたのは、警察と救急車だった。 何故、救急車。 でも、結果的にそれがとても助かったのだからと、後日菓子折を持って母親がおばちゃんちにお礼に行った。 防御創というのだそうだ、白が受けた傷は。 男のかざしたナイフを、白は目を見開いたまま無表情にも見える顔をして無造作に左手ではらった。 「何を…!」 道路の上に膝をついたまま、瀬尾が叫ぶ。 「ちくしょおおおお!!!」 逆上した男がバランスを崩してナイフを取り落とした。 男が体勢を立て直す前に、思い切って飛びかかる。 そのときには、さすがにやばいと思ったのか近所のおじさん連中が数人出てきて、怒号と共に男を取り押さえてくれた。 瀬尾ごと。 「痛い痛い痛い痛い!!」 自分の上に少なくとも二人のおじさんがのっかっている。 でも、自分の下にはストーカーが潰れているので、下手に彼らがどいてしまっては危ない。 「痛いけどこのままー!!」 叫んでみた。 白がどうしているか、そればかりが気になったけど、非常に狭まってしまった視界には彼の姿は見えなかった。 駆けつけてきた警察官が、ストーカーを緊急逮捕した。 男が警官に引っ立てられていって、ようやく瀬尾はきょろきょろと白の姿を探す。 到着していた救急車の前で、救急隊員が白の手を取って様子を見ている。 その小さくて白い手からは、手首にかけて赤黒い血の筋が流れ落ちているのが見えた。 「あ、ケガ…」 慌てて走り寄る瀬尾に、白が一瞬視線をよこす。 「あんたは?」 「え?」 「あんたはケガなかったのかよ」 「あ、うん。痛かっただけ」 「どこ」 「おじさんたちに押し潰されたから、ひざと腹が痛い」 「…ケガは?」 「してない」 「なんだ」 白の顔に、隠しきれない安堵の表情が浮かんだ。 「驚かすなよ、ばか」 「自分こそ、手は?」 警官と何か話していた救急隊員が、「手当をします。乗ってください」と白を促す。 「のちほど話をうかがいに行きます」 警官が白と瀬尾に言った。 「で、なんで?」 「え?なにが?」 「なんであんたまで乗ってんだよ」 「だって、乗ってくれって言われたから」 「帰れよ、家」 「そんなこと言われても」 「帰れったら」 子供のように口をとがらせて、 「…お母さん、心配する」 そう言った。
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