104人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
06
こんな事件になっちゃったからには、もう白がAVの仕事することもないのかなぁ、となんとなく思っていた瀬尾だったが、予想に反して事件からわずか2週間後に白は撮影現場に姿を現した。
「ざーす」
相変わらずやる気があるんだかないんだかわからない挨拶をしながら、部屋に入ってくるなり部屋の隅っこでゲームを始める。
今日は暖かな日だから、着ているものは白いパーカーだった。
『あ、あれ、初めて会った日に着てたヤツだ』
なんとなく嬉しくなった瀬尾だったが、
「瀬尾ー、ゴム買ってきてえー」
高橋君の声がして、ええっ!?と振り向くと、またてへっと笑った顔をしてみせてきやがったので、さすがに人の良い瀬尾もむかっときた。
「俺やだよー、コンビニって平日はおばちゃんがいてさあ、俺のこと見てすんごいにやにやして、領収書なんか頼むとはいはいはいはいって、なんか言いたそうに笑うしー」
「ごめんねえー瀬尾ちゃーん、でも行ってきてえ~」
両手を合わせてお願いポーズの高橋くんは、それでも一歩もひかない構えで、気持ち悪い。
ちくしょう、次の飲みではおごらせっかんな!と、しぶしぶ靴を履く。
「俺もいく」
背後からかかった声は、確かに白の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!