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朝早くに母親から電話がきて、潤は帰っていった。 家族みんなの目の前で、白のこめかみあたりに軽くキスをして。 夜遅く戻ってきたからはじめて二人を目にした父親は仰天していたけど、母親は、 「うちの兄弟もあんな感じだったらいいのに」 などと言いだし、雅之と悠希の「できるか!」攻撃をくらっていた。 白は笑って見ていた。 「あー、ここだわ、やっぱり」 JRやら何やら乗り継いで、昼前に到着した動物園の門の前で、白がそう言った。 天気は良いのだが、晴れ渡ったせいで逆に空気は澄んで冷たかった。 「あってた?やっぱりそうでしょ。ここだと思ったんだ、話聞いて。じいちゃんちがこの近くでさあ」 自分の手柄のように嬉しがる瀬尾に(実際そうなのだが)、白は 「なにやってんの、さっさと行くよ」 容赦ない。 「えー、ちょっと待ってよ!」 慌てて後を追いながらも、昨夜の白はずっと微笑んでいたのだけれど、なんだかその笑顔は瀬尾を落ち着かなくさせたから、今みたいな乱暴で勝手な白のほうがいいかな、とちょっと思った。 門を入る前に一度立ち止まって、ここに幼い白たちが来たんだなぁと感慨にふける。 「早く来いや!」 怒鳴られたけど。 「あ、乗り物とかあるじゃん」 「ちゃっちいなぁ」 そう言いながらも白は嬉しそうだ。 「小動物とか触れるコーナーもある」 「あんた、好きそうだね、そういうの」 「え、気持ちいいじゃん、ふわふわで」 「まあね」 「あ、見て見て、あれ、すっげえ!」 「…乗らないから」 「ええー、なんでえ?」 「観覧車に男二人で乗ってどうすんだよ」 「他に誰も乗ってないからいいじゃん」 「だからだよ」 「ええー」 「絶対、乗らないからな」 「けち」 「男二人で何が楽しいんだばか」 「ばか!?」 「ばかだろ」 「折角連れてきてあげたのに!」 「誰も頼んでねえよ」 「頼んだじゃん!」 笑う白の声。 小さく甘く笑う声もいいけど、こんなふうに大笑いしている白のほうが好きだと、瀬尾は思った。
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