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「お疲れさま、今日は一段と可愛いねお嬢さん。串焼きも全部松阪牛だよ、焼けてるから自由に食べて」
Tシャツにデニム姿の田村さんも珍しいが、何よりタオルを巻いてるのが似合いすぎていて、何処から見ても屋台の人にしか見えない。
「百合さんは肉食べないの?」
「私はお肉があまり……」
じゃあ、ジャガイモのバター焼きがあるからこれ食べなさいと、トングで紙皿に入れるのもサマになっている。
近くのテントにベンチも設置されてるので、田村さんが視界に入る場所に座りイナリと食べる事にしたが、妹は網の前で待機し焼けるとすぐに食べている。
イナリにジャガを食べさせつつ、私も口に入れていると見慣れない男性が隣に座って来た。
「こんにちわ、ここ空いてますか?」
「あ、はい、どうぞ」
男性二人組は浴衣を着ていて背も高く、今時の若者と言った感じだが何となく品がある。
焼いたトウモロコシ等も紙皿に入れていたが、おかわりしようと立ち上がると、不意に声をかけられた。
「あっちに皆集まってるんですけど、良かったら一緒に行きませんか?」
「えっ?!」
こういう対応に慣れてないのでどうしようかと妹に目をやると、肉に目が釘付けで全く気づいてもらえない。
イナリがリードを金網側に引き『早くおかわりを取れ』と合図するので、それを理由に断る事にした。
「いえ私達、もう少しここで食べてからにします」
「あっちでもバーベキューしてるし、せっかく……」
言葉が途中で止まった青年は、顔色が変わりそそくさと逃げるように何処かへ行ってしまった。
不思議に思って田村さんの方を見たが、次々にお肉を焼いて、睨みを利かせた感じには見えない。
「イナリも吠えてないのに……」
ソーセージやジャガイモを皿に入れ、元の場所に戻ると妹も誰かに声をかけられてる風だったが、同じように男性が逃げて行くのが見えた。
妹の場合は目の前に田村さんがいるしまだ分かるが、その後も声を掛けられては逃げて行く男性達を疑問に思い、辺りを見回し始めた。
最初の二人が言っていた『あっち』の方向を見ると、赤刺繍の八雲さんや洋がいて周りには若い女の子が一杯いる。
滋さんを含む男性陣の回りにも女性が沢山いてハーレム状態だったが、リーダーと啄の姿は見えなかった。
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