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「どうしたんですか?腹具合が悪い豚のような顔して」
「見た事あるんか!」
即ツッコミを入れた啄にそっとラムネを渡すと、プチ講習が始まる。
「啄はまだしもリーダーは背も高いし、顔が怖いだけでイケメンの雰囲気は出せる筈です」
「雰囲気ってかなり失礼だな」
「でも話せてないんでしょ?美容院まで行ったのにまさかとは思いますが、相手が来るのを格好付けて待ってた訳じゃないですよね?」
いつの間にか瑠里先生の言う事を聞く生徒のように、リーダー達は正面を向いて話を聞いていた。
「俺は……女に愛想とか使えねーし」
「あのねアンタらは八雲さんや洋みたいに、じっとしてても女性が寄って来る期待は捨てた方がいい、強面と豚面だよ?」
『ひ、酷い……』
かなりキツイ事を言ってる気がするのに、黙って聞いている二人はよっぽど悔しかったのかもしれない。
瑠里先生は小声になりアドバイスをしている様子だし、私が出て更に毒を吐くより妹に任せ、焼きそばでも取りに行った方がマシな気もする。
イナリのリードも妹が掴んでいるし、こっそりとその場を離れると、女子の集団もいないので八雲さん達のグループもこの辺りからは離れてそうだ。
焼きそばの屋台に並びおじさんに注文をすると、おまけで二つ包んでくれ、妹に手土産が出来たと喜んでいると又知らない男性が声を掛けてきた。
さっきから何度も同じ目に合ってるので、続きの展開は分かっているし、どうせ顔色を変えてどっかに行くんでしょと思いながら一応挨拶はしておいた。
「月影百合さんでしょ、妹さんは?」
「えっ、あの、あっちで待ってます」
名指しだったので思わず顔を上げると、記憶にはないがこの人も今風のアカ抜けた感じの青年だった。
グレーの浴衣が似合い背も高く、リーダー達には可哀想だがモテるオーラが出ていた。
立ち止まって話をしている間も、何人かの女性がチラチラこちらを見ている。
『あの子彼女かな?いや、同じ職場で話をしてるだけじゃないの』
という感じで周りの反応は分かるが、名前を知っているという事はこの人はイザリ屋の人だ。
顔を見た事がない人は沢山いるので、特に不思議ではないが女性の視線も痛いので、お辞儀をしてその場を立ち去った。
ベンチまで戻るとまだ瑠里先生の授業は続いているので、焼きそばを頬張り始めると、先程の男性が隣に腰を下ろした。
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