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「美味しそうですね、一つ貰っていいですか?飲み物と交換して下さい」
返事を聞かず紙コップを置き、勝手に焼きそばのパックを開ける姿で何となく嫌な予感がしてくる。
この感じ金刺繍の滋さんと似てると思っていると、食べ始めてから今更のように自己紹介してきた。
「俺、立花樹と言いまふ……」
思った通りなので顔をしかめ席を立とうとすると、そんなあからさまに態度変えなくても、挨拶位させてと止められた。
溜め息をつきながら座り直し、とりあえず無言で口に運んでいたが、男性だけあって私より後に食べたのにもう容器が空になっている。
「噂通り可愛い姉妹だね、次一緒に仕事するの楽しみだわ」
「えっ?まさかブルーの人なんですか?」
「プッ、そんな呼ばれ方初めてだけど、青刺繍のリーダーだよ」
想像してた人よりずっと若くて、ウチのリーダーは二十代の筈だけど、この人は私と変わらないように見える。
「今日かなり監視されてるでしょ?」
ハッとして辺りを見回しても何の気配も感じないし、人も多いので全く分からない。
「声かけた時も身内の視線凄くってさ、他の奴ら怖くて逃げたに違いないと思って」
「誰がどこで見てるんですか」
男性達が途中で逃げ出した原因は身内だと知った時点で、今日まだ顔を見ていないキツネ……いや、社長が思い浮かび苛立ちを覚えていた。
「うわ顔つき変わった、怖いね般若って」
初対面の時のイメージはスッカリと消えてしまい、もうこの人もキツネの一味としか思えなくなっている。
「社長に伝えて下さい、コンパとか言ってたのに、影でコソコソ見張るなら出て来いって」
「ふふっ、社長だけじゃないと思うけどまぁ、伝えておくよ」
帰れオーラ全開なのを悟った様子で、やっと立ち上がりベンチから離れてくれた。
残りの焼きそばを食べてジュースを飲んでいると、疲れた表情の妹がドカッと隣に座った。
「はぁ、余計なお世話して疲れた」
「瑠里先生お疲れ様、焼きそばあるけど食べる?」
せっかくの手土産だったのに、首を横に振る所を見ると『肉以外は口にしません』と言われてるみたいだ。
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