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母は早くから起きていて、今日も台所でゴソゴソと動いているようだが、リビングに入るとしょう油のキツイ匂いに顔を歪めた。
「何、この匂い」
「うふふ、キュウリが余ったから即席で醤油漬けにしてみたよ、あとは冷蔵庫で寝かすだけ」
恐らくいつもの通り味見はしてないと思うので、特に期待はしてなかった。
「今日も出かけるんでしょ?早く支度しないと」
トレーニングの日は日勤の短時間だと思っている母は、朝ご飯を準備しながら声をかけてきた。
「うん、分かってる」
支度に入るとイナリと母で妹を起こしに行ったが、いい案が浮かばす何となく気が重い。
妹は準備が遅いのでテレビの部屋に入ると、母が何個目か分からないおにぎりを頬張りながら隣に腰を下ろした。
「どうしたの?腹具合でも悪そうな浮かない顔で」
「いや大丈夫だけど、そういえば小さい頃カマキリって捕まえた?」
質問が唐突過ぎたのか少し驚いた様子だったが、田舎育ちの母に思わず聞いてしまっていた。
「あいつは正面からだと難しいけど、後ろから首の辺りをヒョイと掴むとすぐに捕れるよね~、イナリ」
イナリの首をヒョイとあげながら得意そうな顔をする母を見て、何となくヒントを貰った気がした。
「ちょっとイナリ放してあげて、ってかまだおにぎり食べる気」
「アンタ達を追い出したらイナリと散歩だよ?腹が減っては戦は出来ないから」
散歩の為に何キロカロリー摂取する気だと呆れながら、イナリと母を見ていると、行動が更に似てきて溜め息が漏れる。
そろそろ出ようと妹が玄関先で声をかけてきて、慌てて後を追うと瑠里は社長に貰ったバッグを背負い、私はネックレスをこっそりつけている。
お守りという訳ではなく気に入ってるが、着けて行く場所がないのでテンションを上げる為だ。
受付で木村さんに挨拶をし、着替えを済ませると早速トレーニングに入った。
「カマキリは正面からの攻撃には強いみたいだよ、ドラム缶情報だけど」
「へぇそうなんだ、姉さん双棒からブーメランとか出ない?私パチンコ的な武器出すように努力してみる」
『ふ……古っ!』
せめてこの時代なんだからもっとハイテクな物を出す努力をして欲しい。
『ブーメランか……』
いつも双棒から針金のような武器や刀を出しているが、飛び道具は初めてだし、どうやって出せばいいのかよく分からない。
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