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妹は柏餅の形と色の爆弾を変化させて、たまに双棒に持ち手がついただけのピストルのような物体を出す時もある。
お互いに意識を集中させるだけなので、言い出したくせに妹は既に飽きている気もするが、私は腰の双棒に『ブーメラン・ブーメラン』と唱え目を瞑った。
「よし!ちょっと敵を一体出してみよう」
いつの間にか操作パネルに移動していた妹が、敵の影を出し見たくもないあのカマキリが姿を現す。
「姉さん、双棒が形が変わってきてるからいい感じかもよ?」
確かに形は変化しているが、どうやってちぎって投げるかは不明だし、目の前のカマキリは鎌を大きく広げて今にも攻撃してきそうだ。
「ちょ、ちょっと待って瑠里、まだこのブーメラン外れてくれな……」
カマキリが攻撃を始めたので、ブーメラン型になった双棒を引きずりながら走って逃げ出した。
「般若~、後ろから大カマキリが追いかけてるぞ~!」
「そんなお知らせいらねーよ!瑠里も見てないで手伝えやっ!」
逃げながら双棒を必死に引っ張ってみるが、どうやっても外れないので、これならまだ針金の形に戻した方がマシだ。
「姉さん、カマが迫ってるぅ――っ!」
「グオォォ――ッ!」
オッサンのような声で気合いを入れ、力任せに何とか外すと、振り向き様にブーメランを投げそのまま突っ走った。
「当たったよ――っ!」
妹の声で足を止めると、カマキリの姿はなくどうやら消滅したようだが、ブーメランは弧を描いて私の元に帰ろうとしている。
「えっ、ブーメラン何処に戻るつもり……?」
強引にちぎって針金を変形させ投げただけなので、全面が刃になっているし、そのままだとこちらの首が飛びそうだ。
「どうしようっ、キャッチの仕方が分からない!」
「えぇ――っ!自分が出したモンでしょ、何とかならない?」
向かってくるブーメランに『消えろ!』と目を閉じ念仏のように唱えたが、シュンシュンと音は止まらず、私を目がけている気配は消えない。
『ダメだ!』
と思って目を開けようとした時、ドカ――ンと大きな爆発と煙で吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「はぁ危なかった、もう少しで姉さんの首が飛ぶ所だったよ」
妹の声が遠くから聞こえ我に返り、この爆発でも死にそうだと心で思いながら埃を払い起き上がった。
腰元を見るとブーメランはちぎった場所に戻っていて、静かに針金の状態になり始めた。
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