災いの刻印

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カマキリを倒すのではなく、ただ糸を使って鎌を縛るだけなんて一言も聞いてない。 ヘルプは地上にいるカマキリ担当のようで、あとはこの人達が何とかしてくれるみたいだ。 ボスカマキリは二匹で、雑魚を減らしていかないと姿すら見せず、逃げられる恐れもあるという。 頭が良く悪知恵も働くので油断は出来ないが、私達は言われた通り、鎌を縛る事に専念すれば良さそうだ。 説明の途中で、青刺繍のメンバーも四人程入って来て自己紹介された。 だが私達の頭は社長への怒りと、糸の使い方が全く分からない焦りで一杯になっていた。 顔色が悪いみたいですが大丈夫ですかと田村さんが声をかけてくれたので、耳元に手を当てて囁いた。 「私達、糸の使い方全く教わっていません……」 「えっ!」 声を上げた田村さんに一同の視線が向いたが、私達はヘルプどころか足手纏いになる可能性もある。 田村さんがコッソリと樹さんに事情を説明する姿を見て、ウチのリーダーに報告をしておいた。 「リーダーすんません、社長から糸の使い方聞いてなかったので……今日のヘルプ入れないかもです」 「はあっ?じゃあ今まで毎日何してたんだよ!」 「カマキリを倒す練習してました……」 一瞬よろけてから視線を戻すと、だから相談してみたり苦戦してるとか、訳の分からん事言ってたのかと納得したようだった。 やっとリーダーに言いたい事が通じたみたいだがあとの祭りだし、妹は受付に戻る準備をしてリュックのファスナーを閉めている。 「今日は外れた方が良さそうだな、応援で迷惑かけても悪いし」 救護班と思われる人が入ると、私達はドアの近くで待機していた。 「百合さん、瑠里さん、構いませんよ?こちらとしては敵の数が減れば問題ありませんので」 田村さんは仕方なさそうに重い溜め息をついていた。 「地上の方が遥かに多いし、田村さんと無色チームにお任せして、俺達は空中とボス仕留めてそっちに加わるから」 樹さんは外す気がゼロなのをみると、金刺繍の滋さんと雰囲気が重なり、まだウチのリーダーの方が強面だが優しい気がした。 「さあ、行こうか」 全員でパネル部屋に向かう中、無色チームと田村さんだけは苦笑いを浮かべていた。 扉を潜ると真っ暗な中、広大な草原が広がっていて、近くには木も沢山生い茂っているので巣を作るには向いてそうな場所だった。 (小麦イザリ屋帳③-Ⅱへ続く)
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